エスイノベーションの大杉です。地域からはじめる事業承継、今回は2023年に「ローカルM&A 」を出版された、株式会社絆コーポレーションの小川潤也代表のインタビューをお届けします。地方都市が抱えるM&Aの問題、解決のため取り組むべき課題について伺いました。後継者に事業を承継したい!事業を多角化したい!でも「M&A」って何から始めたら良いの?という経営者の皆さまへお届けします!

株式会社 絆コーポレーション    
代表取締役 小川潤也(おがわ じゅんや)

1975年新潟県新潟市生まれ
1998年 株式会社富士銀行入行
法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける
2004年 医療介護人材サービス 株式会社ケアスタッフ入社
2007年 株式会社ケアスタッフ代表取締役就任
2010年 株式会社絆コーポレーション設立
事業承継型、再生型のM&Aアドバイザリー事業を展開

著書
「継がない子、残したい親のM&A戦略    (幻冬舎)」
「ローカルM&A 地方都市中小企業の価値と思いを次世代につなぐ究極解    (講談社)」

地方都市でもM&Aアドバイザリー事業は成立する!

ー    事業承継事業立ち上げのきっかけを教えて下さい
銀行員時代に法人担当としてM&Aに携わったのが始まりです。ですが、当時の大手銀行は、大口のM&A案件の取扱いはあっても、会社の一部を売却するような中小企業のM&Aまでは対応しきれない状況でした。自分自身、これからM&A市場は、中小企業案件が増え、面白くなるだろうと感じていたところでしたので、もどかしさを抱えながら働いていた部分もあります。
2004年に銀行を退職し新潟へ戻り、父が立ち上げた医療介護人材サービス事業を継ぎ。2010年に、新潟の人口減や後継者不足の散見から、再びM&Aに着目し「絆コーポレーション」を設立しました。これが新潟での事業承継スタートとなります。

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                                            絆コーポレーション    小川潤也代表取締役

ー    事業承継アドバイザリー事業の反響はいかがでしたか?
絆コーポレーションを設立した頃は、ようやく地方銀行がM&Aに注目し始めたタイミングでした。ですが実際のところは、新潟でM&Aと言っても、大手のM&Aセンターを中心としたプレイヤーがほとんどで。銀行に相談に行った時も「地方でM&A?商売にならないよ!」とバッサリ言われましたね。

地方都市M&A「買い手・売り手」の最新動向

ー    事業設立から、地方都市のM&Aの動向で感じる事はありますか?
2014年くらいから案件が動きはじめています。地方都市の傾向として、一つは、後継者探しにM&Aが必要と感じていても、「良い時に動かない」当然、黒字会社の方がM&Aには好条件ですが、先行きや見通しが怪しくなった時に相談にいらっしゃる事がほとんどです。
二つ目は、地方都市でのM&Aと言えば、これまではリタイアするために事業承継(会社を売却)を選択する会社がほぼ100%でした。ですが、ここ最近は、50代や60代の経営者から、事業を途中でバイアウトし、悠々自適な人生を選択したいという相談が増えています。(これまでは首都圏の経営者に多く見られた傾向)M&Aという選択肢を事業戦略の一環として考えるようになってきたのは、ここ10年ほどの変化と感じています。

ー    買い手の動向はいかがですか?
元気な買い手は地方都市にも見受けられますが、圧倒的に首都圏に集中しています。彼らは地方都市の先行きの見えない企業に、様々な視点からテコ入れし成長させる。事業を成長させるノウハウがあるんですよね。もちろん成長する可能性があるから投資するわけですが、そこに絶対はありません。M&Aの売り案件は中古自動車と一緒で完璧な物はなく、手を加え補修し良い状態にする、リスクを取りながらもチャレンジしていく姿勢が大事だと思います。地方都市の買い手は、石橋を慎重に何度も叩き、渡るかどうかを判断しているという感じでしょうか。

ー    なぜ地方都市の買い手は慎重なのでしょうか?
地方が置かれている状況だと思います。現状に困りごとがない。リスクをとっても成長拡大させるというより、「採算ベースに合ってるし危ない橋は渡らない!」という判断が優っている気がします。

ー    M&Aで成長した企業が地方都市に与えるメリットは?
今は自社にないサービスや資源を、M&Aによって買収し成長を遂げる企業がこれからは必ず増えます。そして、リスクを取ってでも拡大する会社と、そこまで踏み出せない会社との差が広がっていくはずです。M&Aは、必然的にリスクを取れる人たちが多いところで加速しますから、買い手の判断次第で、新潟も含め地方都市のM&Aはもっと活性化するはずです!

はじめての事業承継アドバイス

ー    企業買収する際のヒントはありますか?
業種、業界によってリスクの取り方が違ってきますが、基本的には完璧なものはないという前提を持つ事。M&Aを一つの成長戦略の選択肢として、まずは買ってみる。はじめは経営母体に影響がない程度の金額が理想です。このような前提で始めてみると、必ず新しい局面が生まれてくるはずです。一度M&Aで事業を買い成功したお客様は、次のM&Aに着手する傾向もあります。

ー    リスクの一例を挙げていただけますか?
借金問題です。「銀行がお金を貸してくれない」「借りるのが面倒」と言う理由で、社長個人が会社にお金を貸しているケースがあります。このような企業は、借入過多になっていますが、社長からの借入の返済を免除してもらうと、自己資本が増えます。さらに社長が辞めると役員報酬がなくなり、営業利益が増えますので、借金が返せるかどうかを判断基準にすると良いと思います。中には、借金が返せないから企業を売却したいと言う方もいます。そのような企業を買ったとして事業自体が変わりがなければ、営業利益も変化せず借金は返せませんから、どのように手を加え成長させて行くかを描く事が大事です。

ー    では、M&Aの際、企業選びでどんな所に注目すべきか教えて下さい
買い手としては、社長がいなくても自走できている企業を選ぶ事です。社長や社長の親族を中心に事業が回っている企業は注意が必要です。中心的な役割を担っている人たちが辞めた後、実務を新会社に引き継ぐには、ある程度の規模感が必要になります。

地方都市の中小企業に とことん寄り添うM&A

ー    DD(デューデリジェンス)で心掛けていることは?
まず、資金繰りにリミットがあるお客様には、ゴール地点を逆算し、全力で臨んでいます。買い手と売り手の最大公約数を見極めることが鍵となります。そして、双方の話し合いで大切にしているのは「ありのまま」です。DDでは、買い手に潜在的なリスクや問題点を把握して貰うことも必要です。隠したくなる気持ちもわかりますが、書類を見れば必ず明るみになる事です!もちろん、あらゆる側面から専門家が実態調査を行いますので、問題点や経営課題が発覚する事もあります。そのような局面でも私たちは決算書を紐解き数字を上げるヒントを探ります。事業に価値を見出せればM&Aは成立しますので。「ありのまま」に話した方が信頼関係の構築はもちろん、「早くM&Aが進みますよ!」とお話ししています。

IMG_8904.jpg 25.86 KB                    ローカルM&A 地方都市中小企業の「価値」と「思い」を次世代につなぐ究極解

債務超過!業績不振!それでも企業を再生させる道がある

ー    これから地方都市M&Aの展望について教えて下さい
後継者不在の企業が第三者承継をするのは当たり前ですが、事業再生を目的として実行する「再生型M&A」が増えていくと思います。再生型M&Aは、毎月の返済が滞りはじめた局面で、リスケを金融機関にお願いし、資金繰りがなんとか持つ期間で、事業を存続しながらスポンサーに出資してもらい事業を引き継ぐと言うものです。債務超過であっても、事業に価値があれば譲渡でき、借入金の返済を金融機関が協力してくれる「中小企業の事業再生等ガイドライン」も、これから周知されていくと思いますし、何よりも再生型M&Aは金融機関からの借入はスポンサーが引き継ぐ必要はないので、非常に割安で買うことができます。地域の企業数も減らず、事業もさらにバージョンアップし、従業員の雇用も守られる!経営者はスポンサーサイドとして買い手にも、注目して欲しいですね。

ー    再生型M&Aは増えているのでしょうか?
現在、絆コーポレーションでは3割が再生型M&Aです。M&Aにより、会社が蘇り、雇用が生まれ、税収にも結びつき、地域が活性化する、このような意義が見出せれば金融機関も協力してくれます。私たちにとっては、非常に難しい手法となりますが、その分、達成感があります!社会貢献はもちろんのこと、借金があるから諦めていた…と言う社長さんたちからは、肩の荷が降りたと大変喜ばれています。返せないほどの借金があってもM&Aできるスキームがあると言うことを知って欲しいです。再生型M&Aの認知度が高まれば、倒産や廃業も減るはずです。

ー    M&A仲介業社の選び方に関してアドバイスをお願いします
ここ最近、一定規模の地方経営者に関して、M&A業者から頻繁にDMが届くようになりました。それに騙されないで欲しいという事です!スムーズにディールを完成させようとすると、売り手企業の価値は下げられ、手数料も上乗せされます、納得行くディールを求めるのならば慎重になって下さい。具体的には「あなたの会社に良い買い手がいるので話がしたい」「あなたの会社を指名している企業がいます」という内容です。何が言いたいのかと言うと、うちの会社にも同じようなDMが多く届きます(笑)事業内容も調べずに送っているって事です。

ー    絆コーポレーションが事業承継で大切にしている事を教えて下さい
経営者の方ってギリギリまで頑張るんです!ですが、それでは間に合わないケースもあります。少し余裕があるタイミングで相談をお願いします。相談する勇気が新しい局面になりますし、万が一の事があっても新しい提案ができるはずです。私たちは、売り手・買い手にギフト(贈り物)になるようなM&Aを目指し!買い手には、投資した金額以上の価値が見出せるような、また売り手には、M&A後の自分の会社を眺め良かったと思えるようなディールを心がけています。東京だけが元気でも日本は元気になりません、地方都市こそ元気に!頑張りましょう!


数多くの事業承継サポートから、一隻眼にて企業の優良な経営資源を見出し、地方都市の事業再生を図る小川代表。地元を中心としたローカルM&Aの手法は、これから全国で認知度を上げ、地方都市を元気にしてくれるはずです!絆コーポレーションの皆様、取材協力ありがとうございました!

    
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